NIMS最新成果ポスター一覧

Aバイオ・医療

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A1
マイルドな電極電位でバイオフィルムを不活化する技術
Mild-potential electrode and additives for deactivating pathogen biofilm
岡本 章玄(国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 ナノシステム分野 電気化学ナノバイオテクノロジーグループ グループリーダー)

バイオフィルムとは材料表面につくヌルッとした細菌の集合体のことで、薬剤を使って洗浄しても取りきれない。細菌感染が広がる原因となることも多く、パンデミックや医療費の問題からも今後ますます新しい殺菌技術の重要性は高まると考えられる。そこで本研究では、細菌の活動を維持するために不可欠な代謝を微弱な電気刺激によって阻害するという新しい殺菌アプローチの原理検証を行なった。抗生物質並みの効果が得られており、今後技術としてどう実装していくか、実際のサンプルへの効果などをさらに検証していく必要がある。

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A2
疲労特性と加工性に優れたCo-Cr合金製チューブとステント
Tubes and stents made of Co-Cr alloys with high formability and improved low-cycle fatigue resistance
土谷 浩一(構造材料研究拠点 NIMS特別研究員)

最近開発した低サイクル疲労特性と加工性に優れたCo-20Cr-10Mn-26Ni合金(CCMN26)について、ステントへの応用を念頭に、冷間加工によりチューブを作製し、熱処理による力学特性の変化を調べた。また実際にステントを作製してその展開特性と拡張後のラジアルフォースを評価した。CCMN26合金チューブはL605合金チューブに比べて優れた強度-延性バランスを示した。また、CCMN26合金製ステントは既存のエルジロイ製ステントと比べて高いラジアルフォースを示した。

B機能性材料

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B1
セラミックスを粉々に!~熱化学破砕法~
Chemothermal pulverization for ceramics
大橋 直樹(機能性材料研究拠点 電気・電子機能分野 電子セラミックスグループ グループリーダー)

硬くて、化学的に強いことがセラミックスの長所である。しかしそれが、再原料化や再資源化を難しくしている。そこで、セラミックスを粉々にする技術を実現した。一般にセラミックスは粉体を高温で処理して焼き固めるが、その全く逆で、高温で処理することで、セラミックスを粉々にしてしまう技術を開発した。「焼結」の反対で、「焼解」とも言える現象である。ということで、ここでは「焼解」技術を紹介する。

B2
銅合金の抗菌・抗ウイルス活性の向上
Improvement of antimicrobial activity of copper alloys
山本 玲子(機能性材料研究拠点 上席研究員)

薬剤耐性菌や治療薬のない新興感染症は世界的な脅威である。このような状況下において、薬剤を用いずに殺菌・ウイルス不活化が可能な銅およびその合金の活用が期待されている。銅・銅合金表面における殺菌には、微生物の種類にもよるが、数時間~1日程度必要である。その時間を短くすることができれば、多様な場面で銅・銅合金の抗菌・抗ウイルス作用を活用できる。そこで、生体に無害なオリゴペプチドによる抗菌活性向上に成功した。銅・銅合金表面では細菌・ウイルスの遺伝情報を担う核酸が分解されるが、NIMS法による核酸分解能向上も確認した。

B3
生物の代謝機構を模倣した再生可能エポキシ樹脂
Renewable epoxy resin mimicking metabolic mechanism
内藤 昌信(統合型材料開発・情報基盤部門 データ駆動高分子設計グループ グループリーダー)

接着剤や塗料、複合材料をはじめ、身近な構造部材として使われている熱硬化性樹脂の一つであるエポキシ樹脂を、天然由来のペプチド水溶液に浸すだけで分解できるように改良し、再生樹脂を得やすくする、新しい熱硬化性プラスチックの資源循環システムを開発した。本システムにより、炭素繊維をエポキシ樹脂で固めた炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の再利用をはじめ、リサイクル問題が顕在化している幅広い産業分野において再生プラスチック利用の促進が期待される。

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B4
市販樹脂のナノ多孔化技術と多孔体創製
Fabrication of nanoporous polymers from commercially-available polymers
佐光 貞樹(統合型材料開発・情報基盤部門 データ駆動高分子設計グループ 主幹研究員)

ナノ多孔質プラスチック材料は電池のセパレーター・分離膜・医療材料といった先端素材で活用されている。NIMSでは相分離・結晶化現象の学理を探究し、新たな知見に基づく高分子のナノ多孔化技術とナノ多孔体の開発を進めている。本発表では、耐熱性・力学強度に優れた市販のエンジニアリングプラスチックを素材として作製したナノ多孔性微粒子などを紹介する。

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B5
機能性セラミックスにおける結晶配向制御
Control of crystallographic orientation in functional ceramics
鈴木 達(機能性材料研究拠点 光機能分野 セラミックスプロセッシンググループ グループリーダー)

物質の特性は結晶方位に依存するため、バルクセラミックスの組織粒を特性の優れた結晶方位を揃えることで、バルク全体の特性の向上が可能であり、磁場を用いた結晶方位制御プロセスを提供する。結晶磁気異方性を有すれば、アルミナや酸化亜鉛などの反磁性セラミックスへの適用も可能であり、粒子形状を問わない。焼結時には磁場は不要であり、SPSやホットプレスなどの緻密化手法の使用も可能。

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B6
高温、高圧を駆使したトポロジー制御により合成された永久高密度化シリカガラスの構造とダイナミクス
Structure and dynamics in permanently densified silica glass synthesized under high pressure and high temperature
小原 真司(先端材料解析研究拠点 独立研究者)

高温、高圧を駆使することにより世界でもっとも構造秩序のある高屈折高密度シリカ(SiO2)ガラスの合成に成功した。本ガラスの構造的特徴とダイナミクスをX線、中性子を用いた量子ビーム実験と構造モデリング、トポロジカル解析により明らかにし、高密度化メカニズムを提案することに成功した。

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B7
革新的次世代断熱素材・遮熱技術
Next-generation thermal insulation materials and innovative coating technologies
ウー ラダー(構造材料研究拠点 設計・創造分野 超耐熱材料グループ 主任研究員)

近年、建造物や自動車などの省エネルギー化において、熱管理技術に大きな関心が寄せられている。再生可能エネルギーの導入拡大、水素社会実現の推進に向け、液化水素燃料の輸送または貯蔵の際には-253℃の極低温環境を維持する優れた断熱材による保冷が欠かせない。 水素社会実現のためには水素燃料火力発電に必要な遮熱コーティングの開発も必要である。本研究では、高いパフォーマンスを発揮する次世代断熱材料及び超高温遮熱コーティングの合成、生産、評価に係る開発を行っている。研究成果を社会に普及させるためには優れた性能と経済性の両方を兼ね備える実用化のための技術開発も重要となる。研究成果を広く社会に普及させることを目的としてNIMS認定ベンチャー(株式会社Thermalytica)を設立した。ベンチャーでは、独自の技術で製造された世界最高水準の断熱・遮熱性能をもつエアロゲル素材の製造販売とEB-PVD遮熱コーティング加工サービスを提供する。NIMSとして最先端の断熱材・遮熱コーティング技術の研究開発に取り組むことと、ベンチャーとして研究成果を自ら社会に普及することを両輪として、持続可能な社会の構築に貢献していく。

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Cセンサ

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C1
蒸汗センサ
Evaporating Sweat Sensor
川喜多 仁(機能性材料研究拠点 電気・電子機能分野 電気化学センサグループ グループリーダー)

夏場の熱中症や冬場の脱水症の罹患と救急搬送が増加しており、熱中症や脱水症を初期・早期に検知する方法が求められている。その一つとして、汗の計測が検討されているが、従来技術には応答時間、精度、繰り返し利用といった課題がある。そこで、NIMSオリジナルの微小水分に対する高速応答性能を活用するとともに、IoT計測システムを用いたリモートモニタリングに対応した蒸汗センサを開発し、センサ応答と体水分変化率との相関付けを行うことで、熱中症リスクの判定技術への展開を進めている。

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C2
高感度磁気センサーとその応用の研究英語(日本語訳なし)
Research of high sensitivity magnetic sensor and applications
何 東風(構造材料研究拠点 接合・ 造型分野 積層スマート材料グループ 主幹研究員)

Using the FeCoSiB amorphous wire with the length of 5 mm and the diameter of 0.1 mm, we developed pT-level high sensitivity magnetic sensor. This sensor has low noise, high dynamic range long-time stability. We are using this magnetic sensor to do nondestructive evaluation.

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D電子デバイス材料・磁性材料

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D1
2次元半導体材料の新たなCVD技術
New CVD technique for 2D semiconductor materials
佐久間 芳樹(機能性材料研究拠点 光機能分野 エピタキシャルナノ構造グループ グループリーダー)

MoS2やWS2など遷移金属ダイカルコゲナイドと呼ばれる分子層厚の2次元半導体材料に注目が集まっている。しかし、この材料の薄膜合成に関して、産業展開に耐えうるレベルの成膜技術の開発が進んでおらず、今後デバイス応用を進めるうえで大きな障壁となっている。我々は、金属モリブデンの酸化と昇華を使ったOSS-CVD法という全く新しいCVD技術を着想し、その原理実証を行ったので紹介する。

D2
ダイヤモンド高移動度トランジスタ
Diamond high-mobility transistor
山口 尚秀(国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 表面量子相物質グループ 主幹研究員)

ワイドギャップ半導体としてSiCやGaNを凌駕する特性をもつダイヤモンド。その優れた特性を活かした電力変換や高周波増幅への応用が期待される。私たちは六方晶窒化ホウ素(h-BN)という材料と組み合わせてダイヤモンド電界効果トランジスタを作ることで、省電力・高速動作にとって重要な指標である移動度を大きく向上させた。移動度が十分に高いトランジスタでしか見られない量子振動という現象の観測にも成功した。さらに、理論解析によって移動度の制限要因をつきとめ、より優れた性能をしめすダイヤモンドトランジスタの開発に取り組んでいる。

D3
ネオジム磁石状態図データベースの構築
Thermodynamic database for the Nd-based magnets
阿部 太一(構造材料研究拠点 設計・創造分野 計算構造材料グループ 主席研究員)

元素戦略磁性材料研究拠点(ESICMM)において、ネオジム磁石の作成プロセスにおける相平衡・熱力学計算を行うためNd-Fe-B-Co-Cu-Ga-Dy-Alの8つの元素を含むデータベースを構築した。また、酸素を含む系としてNd-Fe-B-Cu-Dy-Oの6元系データベースも構築している。これら2214系に加えて、現在ではSm基1-12系用としてSm-Fe-Co-Cu-Ga-Ti-Vを含むデータベースの構築も進めている。本ポスターではこれらのデータベースの構築状況とこれらを用いた熱力学・相平衡計算例をいくつか紹介する。

D4
高速・簡便半導体ナノ構造製造技術とデバイス応用
Fast & easy semiconductor nanomaterials fabrication techniques and device application
深田 直樹(国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 ナノマテリアル分野 半導体ナノ構造物質グループ グループリーダー)

様々な0-1次元構造を有する半導体ナノ構造の製造法とデバイス応用に関する紹介である。簡便な化学エッチングを利用した方法から、精密に構造制御を行うトップダウン的手法まで、ナノ構造の形状と次元の制御を可能とする特徴的な方法を紹介する。更には、それらを利用した具体的な応用に関しての研究例を紹介する。

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D5
イオンで磁気を操る薄膜デバイス
Magnetic properties tuning device operated by ion insertion
土屋 敬志(国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 ナノシステム分野 ナノイオニクスデバイスグループ 主幹研究員)

近年、人工知能(AI)技術は膨大な情報処理によってあらゆる社会活動の様式を変化させつつあるが、高消費電力が問題となっている。本ポスターでは、イオンと磁性を利用し低消費電力・高集積性AIに資する新しい薄膜デバイスについて発表する。

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E先端計測

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E1
フリーの電気化学インピーダンス解析および可視化ソフトウェア
Free analysis and visualization software for electrochemical impedance spectroscopy
小林 清(機能性材料研究拠点 光機能分野 セラミックスプロセッシンググループ 主幹研究員)

無料で利用できる電気化学インピーダンス解析およびデータ可視化ソフトウェアの紹介である。電気化学インピーダンス解析ソフトウェアには独自のGUI型パラメータ初期値設定機能を実装した。電気化学インピーダンス解析でお悩みの方は是非とも使ってみていただきたい。

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E2
時間分解水素透過測定装置を用いた材料解析
Material analysis by time-resolved hydrogen visualization
板倉 明子(先端材料解析研究拠点 原子構造物性 分野 表界面物理計測グループ グループリーダー)

電子顕微鏡に水素検出機構を付加して水素を可視化するオペランド水素顕微鏡は、水素を試料背面から補給しながら計測することで、透過の時間応答性を反映した水素画像を撮影できる。顕微構造解析による構造分布と局所的な水素拡散挙動路を組み合わせることで、材料内部の構造の推測や、水素の拡散モデルの構築が可能となった。

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E3
高温拡散NMRプローブの開発
Development of high-temperature pulsed-field-gradient NMR probe
端 健二郎(先端材料解析研究拠点 極限計測分野 固体NMRグループ 主幹研究員)

リチウム電池ではLiイオンの移動しやすさが電池の特性に影響を与えるため、Liイオンの拡散現象に興味が持たれている。パルス磁場勾配NMR法はイオンの拡散を直接的に測定することができる測定手法であるが、室温で観測できる測定対象は拡散速度が速い電解質に限定されており、拡散が遅い正極材などは測定することができなかった。しかし、拡散が遅い物質においても温度を上げることで拡散を速くすることができることから、高温で拡散が測定できるプローブを開発した。

E4
断面SPMを用いた実デバイス評価技術
Characterization of actual devices using cross-sectional scanning probe microscopy
石田 暢之(先端材料解析研究拠点 極限計測分野 ナノプローブグループ 主任研究員)

私達の身の回りにある電子機器の多くは、外部電極に電圧を印加することで、内部の電位分布を変化させ、これにより電子やイオンの動きを制御することで、その機能が発現する。つまり、デバイスの内部電位は電子やイオンの挙動を考察する上で最も重要な物理量の一つといえる。我々は、デバイス動作中の内部電位変化を計測するために、走査型プローブ顕微鏡(SPM)技術をベースとした新しい手法を開発している。本発表では、開発した手法を次世代太陽電池や蓄電池の評価へ応用した事例を紹介する。

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E5
極低温STMによるナノスケール分光イメージング
Nanoscale spectroscopic imaging using a cryogenic scanning tunneling microscope
吉澤 俊介(先端材料解析研究拠点 極限計測分野 ナノプローブグループ 主任研究員)

極低温走査型トンネル顕微鏡(STM)は電子状態を高い空間・エネルギー分解能で計測できる顕微分光手法である。量子現象を利用する「量子マテリアル」の研究では、電子状態の精密測定が要求されるので、STMの果たす役割は大きい。量子マテリアルの重要な構成要素である超伝導体中には、超伝導状態の特徴を反映した量子磁束が形成され、ある種の超伝導体(トポロジカル超伝導体)では量子計算への応用も期待される。極低温STMを使った電子状態可視化の技術を使うと、個々の量子磁束をナノスケールで研究することができる。

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E6
パルスマグネット型Kerr顕微鏡の開発
Development of Kerr effect microscopy combined with a pulse magnet
柳生 進二郎(機能性材料研究拠点 電気 ・電子機能分野 ナノ電子デバイス材料グループ 主幹研究員)

パルスマグネットを用いて大幅に小型化した2次元極Kerr効果測定装置の開発した。測定試料サイズは0.5インチ、最大磁場は7kOeで、2次元極Kerr回転角マッピングが可能である。小型化により装置の設置の自由度が大幅に向上した。FeCoMnのハイエントロピー材料に第4の元素を添加した薄膜傾斜コンビナトリアル試料にて、デモ測定を行った。BCC構造が崩れる領域で磁性特性が著しい変化を可視化した。

E7
鍛造シミュレータを用いた材料創製・加工
Materials manufacturing and engineering using forging simulator
黒田 秀治(技術開発・共用部門 材料創製・加工ステーション 鍛造シミュレータグループ 主幹エンジニア)

1500トン鍛造シミュレータは温度やひずみを精緻にコントロールした大型試験材を得ることができ、プロセス・組織・特性を紐づけした材料データを取得できる有効な装置である。本ポスターでは1500トン鍛造シミュレータを用いた戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)での取り組みや共同研究事例を紹介する。

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F計算科学

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F1
第一原理反応速度論と反応工学によるマルチスケール計算技術と触媒への応用
Multiscale computational approach for catalysts with first-principles kinetics & reaction engineering
石川 敦之(エネルギー・環境材料研究拠点 界面計算科学グループ 主任研究員)

本研究では、物質の構造情報から反応速度論的情報を得ることのできる第一原理計算と、反応速度論さらには化学工学のシミュレーション技法を融合することでどのような材料に対しても触媒活性を予測することのできる手法を開発する。さらに、本技法を用いることで既存のメタン触媒を改善する指針を提示したり新たな触媒候補を理論的に提案することで、新たなメタン転換触媒の開発に貢献する。

F2
大規模第一原理計算プログラムCONQUESTの開発と公開
Development and opening the CONQUEST code for large-scale first-principles calculation
宮崎 剛(国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 ナノセオリー分野 量子物性シミュレーショングループ グループリーダー)

第一原理計算は、実験結果に依存せずに原子・電子の振る舞いを量子力学にもとづいて計算する信頼性の高い手法であるが、計算量が膨大であり、計算できる系のサイズに限界があった。この問題を克服するために我々は、100万原子を含む大規模系に対しても第一原理計算を可能とするプログラムCONQUESTを開発した。プログラムは最近オープンソースライセンスで公開され、一般の研究者が無償で使えるようになった。本発表では、CONQUESTによってどのような研究が可能となったのかを紹介する。

Gデータ駆動型材料開発

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G1
科学原理の知識データベースを用いた材料開発
Knowledge database of scientific principles for material research
吉武 道子(機能性材料研究拠点 電気・電子機能分野 ナノ電子デバイス材料グループ 主席研究員)

革新的材料を開発するには、常識にとらわれずに、従来の延長線上でない材料を探索する必要があり、一見発想の飛躍と見える発見は、専門分野に囚われずに科学原理を俯瞰することで達成されている。そこで、科学原理に基づく材料の様々な物性間の関係を分野横断的に探索することで俯瞰的な材料開発を可能にする。

G2
電気化学自動実験によるハイスループット材料探索
Automated robotic electrochemical experiments for high-throughput material searching
松田 翔一(エネルギー・環境材料研究拠点 二次電池材料グループ 主任研究員)

カーボンニュートラルの実現に向けて、エネルギー貯蔵・変換材料に対する社会的ニーズは高い。特に、再生可能エネルギーの大幅導入に向けては、蓄電池や水素関連技術の整備が欠かせない。我々は独自に開発した電気化学自動実験技術を基盤としたハイスループット探索手法を活用し、新規材料の開発を進めている。特に、データ科学的手法と高度に連携することにより、材料発見の高速化が可能となる。本講演では、次世代蓄電池材料開発における成果を中心に、実験自動ロボットを用いた材料探索の実施例を紹介する。

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G3
人工知能による相図作成効率化
Efficient construction of phase diagram by AI
田村 亮(国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 ナノセオリー分野 量子物性シミュレーショングループ 主任研究員)

相図・状態図を効率的に描くために、次に実験すべき点を効率よく提案する新マテリアルズ・インフォマティクス手法を開発した。本手法は、様々な材料系へも適用できる汎用的手法である。Pythonコードはgithub上で公開し、誰でもすぐに利用できるWindowsアプリも開発、公開している。

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G4
基板上の薄膜材料から信号を抽出する電子顕微鏡の4点法英語(日本語訳なし)
Four-point method in electron microscopy to extract signals from thin film materials on substrates
達 博(統合型材料開発・情報基盤部門 材料データプラットフォームセンター 材料データ解析グループ 主任研究員)

不働態化層は、ステンレス鋼の表面に形成され、鋼が腐食するのを防止する薄い酸化膜である。ステンレス鋼の不働態化層の走査型電子顕微鏡(SEM)による計測は、不動態化層の開発研究に多用されてきたものの、信号電子の積分強度を使った試料の形態観察に留まっており、信号電子が持つスペクトル情報が活かされなかった。この提案の目的は、SEMが持つスペクトルデータを最大限に活用するために、不働態化層と鋼母材の両方から来る情報信号に対して、選択的に不働態化層のみに関する情報を抽出し、その情報を定量的に表現する適切な記述子を得るためのデータ駆動型スペクトル解析方法を開発することである。

G5
高分子情報の自動収集
Automatic polymer data curation
岡 博之(統合型材料開発・情報基盤部門 材料データプラットフォームセンター 材料データベースグループ NIMS特別研究員)

マテリアルズ・インフォマティクス用データの大量かつ迅速収集を目的に、既存文書からポリマーデータを自動抽出するシステムの開発を行っている。最初の開発として、学術論文の表からデータを自動抽出することを研究し、表行列のテキスト化やポリマー名認識を行うことで、大量の論文からポリマーデータを精度良く抽出するシステムを開発した。また、文書中データの自動抽出では機械学習が必要となるため、学習データ作成ツール(TeamAnno)の開発も行った。このツールは、データ作成の高効率化を目指して、複数人での連携や固有表現の一括アノテーションなどの機能を有する。本ポスターではこれらのシステムについて紹介する。

H構造材料

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H1
被覆によるMg合金の耐食性制御 -生体材料から構造材料-
Anticorrosion coatings of Mg alloys for biomedical and structural materials
廣本 祥子(構造材料研究拠点 解析・評価分野 耐食材料グループ グループリーダー)

軽量構造材料や生体内溶解性金属材料として注目されているMg合金の課題である低耐食性の改善や急激な初期腐食の抑制のための耐食性被膜を開発している。近年開発が盛んに行われている高強度―高延性のMg合金には、必ずしもAlのような耐食性に寄与する元素が含まれているわけではない。合金組成に依存せず作製でき、高耐食性を発揮する被膜として、電気泳動法による層状複水酸化物被膜の開発を行っている。また、生体用Mg合金の初期腐食抑制のために、生体内で安定な水酸アパタイト被膜と破骨細胞に吸収され骨と置換する炭酸アパタイト被膜の開発も行っている。骨置換する被膜は世界初である。

H2
酸素ポンプ・センサーを用いて合金の耐酸化特性を向上させる表面改質手法の開発
Development of surface modification method for improving oxidation resistance of alloys using oxygen pump-sensor
村上 秀之(構造材料研究拠点 上席研究員)
福本 倫久(秋田大学理工学部 物質科学科 准教授)

材料に求められる条件はより過酷になっており、材料の耐酸化性を付与する表面改質がシステムの寿命や信頼性の担保に必須である。耐酸化性の改善に溶射、PVD、CVD等のコーティングが施されるがプロセスコスト、基材への影響等に問題があり、熱処理と表面改質を同時に行える様な簡便なプロセスを検討している。本ポスターでは、酸素分圧を制御した熱処理で材料の表面に純粋なAl2O3を生成させれば、耐酸化特性が向上するのではとの観点から、酸素ポンプセンサーを用いた新規耐酸化処理手法を提案する。

H3
熱処理プロセス最適化に貢献する応力ー相変態相関データの収集
Measurements of stress effect on phase transformation for optimization of heat treatments
上路 林太郎(構造材料研究拠点 設計・創造分野 塑性加工プロセスグループ 主幹研究員)

環境負荷軽減への対応として、熱処理ラインの設備更新と新しいプロセス設計が必要とされている。また、機械構造材料における高性能化を実現には、マルチマテリアル化や部品形状の複雑化を伴う。しかし、マルチマテリアル化/形状複雑化による熱応力等を考慮した熱処理プロセス設計指針は無い。本発表では、熱処理プロセス最適化に貢献する応力-相変態相関データの収集方法について、ばね鋼を対象とした実例とデータ整理に必要なメカニズムについて示す。

H4
迅速な信頼性データベースの構築に向けて
How to create the database of materials' reliability
松永 哲也(構造材料研究拠点 設計・創造分野 計算構造材料グループ 主幹研究員)

材料信頼性評価には膨大な時間、コスト、資源量(試験数)がかかる。これは迅速なMIの高性能化を阻む一因である。つまり評価時間等を大幅に削減することができれば、豊富なデータベースを参照することで、高精度な材料開発を推進することが可能となる。そこで赤外線サーモグラフィ法により、最短一日で疲労限度を推定することでデータを蓄積し、データベースの成長を加速させる。

H5
中空試験片による高圧水素ガス環境下での材料試験法
Materials testing methods in high-pressure hydrogen with hollow specimens
小野 嘉則(構造材料研究拠点 解析・評価分野 材料強度基準グループ 主幹研究員)

燃料電池自動車(FCV)、水素ステーション(HRS)の本格的普及のためには、FCVの導入支援とHRSの整備費、運営費等の低減に繋がる技術開発が必要とされており、水素環境で使用する材料の共通課題を解決していくことは極めて重要である。材料の水素適合性を評価する従来の試験機では、試験片の周りを高圧水素ガスで満たす装置が必要となるが、その特殊性から、装置の導入と維持に高額の費用がかかり、その結果、試験コストも高額となってしまう。本研究では、試験費用の低減と試験期間の短縮のために簡易な試験方法として、試験片の中に水素を閉じ込める中空試験片を用いた高圧水素中材料試験法を確立し、規格化することを目的としている。

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H6
超音波疲労試験方法の規格化(WES 1112)
Standardization of an ultrasonic fatigue testing method (WES 1112)
古谷 佳之(構造材料研究拠点 解析・評価分野 疲労特性グループ グループリーダー)

超音波疲労試験はギガサイクル疲労の研究を行う上で有効な加速試験法であるが、規格が存在しないことが普及の妨げとなっていた。そこで、日本溶接協会において超音波疲労試験方法の規格であるWES1112が制定された。本報では、規格と付属している解説について紹介するとともに、超音波疲労試験を用いた研究事例を紹介する。

H7
狭隘な切欠き底におけるミクロな疲労き裂のその場観察
In-situ microscopic fatigue crack observation in narrowed notch root
西川 嗣彬(構造材料研究拠点 解析・評価分野 疲労特性グループ 主任研究員)

繰返し荷重負荷により起こる応力集中部の疲労破壊を制御することは、機器の長期信頼性を担保する上で欠かせない。一方、疲労寿命の大部分が、ミクロな疲労き裂の発生と進展に費やされることが知られており、NIMSではミクロな疲労き裂の自動観察システムの構築を進めてきた。本研究では、これまでに構築した観察システムを、従来ほとんど観察されてこなかった狭隘な切欠き底における疲労破壊挙動の観察に適用した。さらに画像相関法を活用してき裂の開口変位を計測することで、従来の表面観察では評価できない試験片内部への疲労き裂の成長挙動の評価と、ミクロな疲労き裂の開閉口挙動の実測を可能にした。

H8
微小球反発硬さ試験機
Small ball rebound hardness tester
宮原 健介(構造材料研究拠点 解析・評価分野 環境疲労特性グループ 主任研究員)

微小球反発硬さ試験機は、試料に小さな球(直径3mmのアルミナ球)を衝突させて硬さ(反発係数)を測る、大変ユニークな試験機である。金属/食品/セラミックス/ゴム/木材など様々なものに対応し、小さな試料(目安として厚さ5mm以上)から大きな構造物まで試験できる。調整やくぼみの読み取りが不要のため、測定は一瞬で完了し、個人差もなく、安定した結果を得られる。複数の企業との協力により、世界で初めて製品化された。製品はポータブルで、360°あらゆる向きに試験できる。

H9
新規表面改質技術による高耐食ステンレス鋼の開発
Development of superior corrosion resistant stainless steels by advanced surface modification techniques
堤 祐介(構造材料研究拠点 解析・評価分野 腐食特性グループ 主席研究員)

ステンレス鋼は優れた耐食性を発揮する特殊鋼として、さまざまな分野において利用されている。しかしながら、塩分が存在する環境ではステンレス鋼には腐食リスクが避けられない。本研究では、合金添加に頼らず、プロセスの工夫によりステンレス鋼の耐食性を極限まで引き出す手法の開発に取り組んでいる。

H10
カルシウムと酸素による亜鉛の高耐食化
Improvement of corrosion resistance of zinc by calcium and oxygen
土井 康太郎(構造材料研究拠点 独立研究者)

亜鉛めっき鋼は、亜鉛めっきが下地の鉄を保護する耐食材料であるが、亜鉛自体は腐食しやすい材料であるため、鋼構造物のさらなる長寿命化には亜鉛自体の耐食性向上が必要となる。亜鉛の耐食性を向上させる化合物に、ハイドロキシカルシウムジンケート(Ca(Zn(OH)3)2·2H2O、以下CHZと表記)という化合物がある。本研究では、CHZ形成を律速する酸素還元反応を促進することで、短時間で亜鉛表面にCHZを形成させる新しい表面処理法を開発した。その結果、これまでよりも最大25倍早くCHZを形成できるようになり、本手法により作製したCHZ層に覆われた亜鉛は裸の亜鉛と比較して約10倍の耐食性を発揮できるようになった。

H11
放射光を利用した金属合金の溶接凝固現象のその場観察
In situ observation of solidification behaviors of metallic alloys during welding using synchrotron radiation
柳樂 知也(構造材料研究拠点 接合・造型分野 溶接・接合技術グループ 主幹研究員)

アーク溶接中に生じる凝固割れは、古くから構造物の破壊に繋がる欠陥として大きな問題となっている。溶接プロセスでは、凝固速度が極めて高い、強烈なアーク光を生じるなどの実験環境の過酷さにより、短時間の凝固過程で生じる凝固割れの観察は極めて困難である。そのため溶融池内の凝固現象や凝固割れの形成機構に関しては十分に明らかになっていない。本研究では、高空間・高時間分解能で金属合金の凝固現象の観察が可能な放射光X線を利用して、Al-Cu合金、ステンレス鋼を対象にアーク溶接中での溶接凝固現象のその場観察を行い、凝固割れなどの組織形成過程および凝固割れの進展挙動の解明を行った。

H12
試料形状によるSLMプロセス中の温度場制御
Temperature field control during SLM process by sample geometry
草野 正大(構造材料研究拠点 接合 ・造型分野 積層スマート材料グループ 研究員)

選択的レーザ溶融法(Selective Laser Melting)は、金属粉末を用いる積層造形法のひとつで、急冷凝固プロセスのため材料の金属組織は微細となる。本研究では、試料形状の工夫によって材料を高温に保持した状態での造形が可能となり、結果として微細組織や力学特性を顕著な変化が認められた。ポスター発表では、試料形状、シミュレーションおよびモニタリングによる温度場、観察による金属組織および力学特性について報告する。

H13
積層造形ミクロ組織形成フェーズフィールド法予測
Microstructure prediction in 3D addtive manufacturing by phase field simulation
野本 祐春(構造材料研究拠点 接合・造型分野 積層スマート材料グループ NIMS特別研究員)

金属粉床レーザー積層造形プロセスにおける高速凝固組織形成予測に対応できる非平衡マルチフェーズフィールド法を開発した。この際、実用合金のシミュレーションが可能となるよう多元系の熱力学データベース連携手法も開発した。9元系Ni合金の等軸晶組織計算において冷却速度に対する擬平衡-非平衡遷移を示した。さらに柱状晶組織形成計算において凝固セル間隔が実験観察とよく一致することを示した。

H14
析出強化型耐熱材料設計システムの開発
Development of search system of precipitation-strengthened high-temperature materials
戸田 佳明(構造材料研究拠点 接合・造型分野 積層スマート材料グループ 主幹研究員)

発電プラントや内燃機関のエネルギー効率向上のため、高温特性の優れた耐熱材料の開発が必要である。NIMSではこれまでに、析出制御により既存材料よりも優れた耐熱鋼・耐熱チタン合金を提案してきた。しかし、従来の実験手法のみの開発では時間や予算の制限による限定的・非効率的な試行錯誤しかできない。そこで、サイバー空間上で新規耐熱材料・製造プロセスを網羅的・効率的に試行錯誤・探索するシステムが必要だと考える。まずは任意の合金組成・温度・熱処理時間における析出組織を迅速に予測するプログラムを作成した。これらを連続実行することで析出組織データベースを構築し、理想組織の合金・プロセスを選択できるようにしたい。

I電池材料

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I1
2インチウエハー薄膜全固体電池
Thin Film All Solid-State Batteries on 2” diameter wafers
大西 剛(エネルギー・環境材料研究拠点 全固体電池グループ グループリーダー)

2インチのSiウエハーに主にスパッタ法にて薄膜の全固体電池を作製した。アルゴン雰囲気中ながら2mAhを超える容量がえられ、10 C(>30 mA)放電も可能である。

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I2
リチウム空気電池の高出力化
High Power Lithium-Air Battery
野村 晃敬(エネルギー・環境材料研究拠点 二次電池材料グループ 主任研究員)

最も高いエネルギー密度をもつリチウム空気電池。現在主流のリチウムイオン電池よりも圧倒的に小型軽量で高容量な蓄電池開発が期待されている。我々はリチウム空気電池向け電池材料の開発とセル(スタック)設計を同時に進めてきた。空気(酸素)を取り込む多孔性正極の空孔構造を調節することで、従来課題となっていたリチウム空気電池の低い出力性能を改善し、高い電流密度でリチウムイオン電池を凌駕する放電容量が得られるようになった。

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I3
高効率ペロブスカイト太陽電池
High performance perovskite solar cells
白井 康裕(エネルギー・環境材料研究拠点 太陽光発電材料グループ グループリーダー)

本研究では、屋外の太陽光はもとより微弱な光環境である屋内においても高電圧出力可能な光発電素子の実現を目指す。具体的には、屋外(100mW/cm2)から一般的なオフィス環境下に存在する環境エネルギー(約0.1mW/cm2)のみで、無線通信・各種センサーなどを備えたデバイスを半永久的にメンテナンスフリーで駆動可能な発電素子を実現する。

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I4
太陽電池における電荷輸送層の開発
Charge transport materials for photovoltaics
柳田 真利(エネルギー・環境材料研究拠点 太陽光発電材料グループ 主幹研究員)

我々はハロゲン化金属ペロブスカイト太陽電池の研究を行っている。ペロブスカイト太陽電池は耐久性がないとされてきたが、太陽電池の正孔輸送層として製造プロセスの高速化やコストを念頭に、高速製膜可能なスパッタ法で作製したNiOx(酸化ニッケル)薄膜を用いることによって、長期信頼性のある太陽電池を開発してきた。今回、更にNiOx表面処理することによって、より高効率なペロブスカイト太陽電池ができるようになった。

J熱電材料

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J1
FAST材®を用いた温度差発電技術
Thermoelectric power generation using FAST materials
高際 良樹(エネルギー・環境材料研究拠点 独立研究者)

Society5.0構想を実現・加速させるためには、各種情報発信機器の駆動を支えるメンテナンスフリーの分散型独立電源の開発が求められている。資源制約の少ない鉄・アルミニウム・シリコン元素のみから構成される、低コストかつ安全なFAST材®を開発し、量産可能な低温駆動型の小型・高集積温度差発電モジュール化技術を構築し、発電実証試験を行った。

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J2
半世紀以上熱電変換の最高性能を誇るBi2Te3系に匹敵する新規材料を開発
Development of a novel thermoelectric material with a conversion efficiency as high as Bi2Te3
森 孝雄(国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 ナノマテリアル分野 熱エネルギー変換材料グループ グループリーダー)

Mg3Sb2系材料にわずかな銅原子を添加することで、2つの熱高性能化効果が発現できることを発見した。それにより、大幅な熱伝導率低減と電荷移動度向上を両立させることに成功した。当該材料を使用した熱電モジュールは、室温と320℃の温度差において、半世紀以上に亘り最高性能の記録を保持し続けているBi2Te3系材料に匹敵する熱電変換効率7.3%を実現した。この技術は、材料性能から見積もられる理論効率は約11%とさらなる高効率化も見込まれ、希少元素であるTeをほぼ含まないことから、IoTセンサーの自立電源やモバイル発電機など幅広い分野での応用が期待される。

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